
リズミカルに躍る色彩を見ていると、その中に泳ぎ溺れたくなるような心地よい夢想に酔いしれてしまいそうです。戦後のアメリカ美術を代表する画家サム・フランシスは、パリ、ニューヨーク、カリフォルニアなど各地にアトリエを構えて制作と発表を行っていましたが、日本もゆかりの深かった土地の一つでした。武満徹、大岡信、大江健三郎などの文化人と親交が深かったことでも知られています。今では伝説の画廊と言われている、南画廊・志水楠男の下で60年代に個展も度々行っており、63年作となっている本作はその頃に作られたリトグラフと思われます。サム・フランシスの抽象画はさまざまな見方ができ、掛け方のアレンジもいろいろと楽しめるところも魅力。中国陶磁や骨董などと渋く組み合わせてみたり、それとは全く対照的に、ポップな感じで飾ってみたりと(どことなくパーティーの賑やかさみたいな雰囲気もこの絵からは感じられます)、自分流に楽しんでみてはいかが?
1923年6月25日、カリフォルニア州、サン・マテオに生まれる、1994年11月4日没
カリフォルニア大学バークレー校で植物学、心理学、医学を学ぶが、兵役中のパイロット訓練中に事故に遭いその療養中、絵を描き始めた。第二次大戦後、パリに渡り新進画家としてデビュー、成功を手にする。その後はカリフォルニアに拠点をおきながら、パリ、ニューヨーク、東京のスタジオを行き来し、華麗な色彩がほとばしる独自の抽象絵画を展開していった。サム・フランシスの作品には、水墨画を思わせるハネやにじみ、画面に残される大胆な余白の効果など日本や東洋の美術に通じるものがある。1957年に初来日し、ヨーロッパのアンフォルメル運動(第二次大戦後フランスを中心に興った絵画運動。批評家ミシェル・タピエが主唱、あらゆる定形を否定し混沌とした無秩序を探求した)を旋風のようにもたらしたサム・フランシスは、日本人と2度結婚したこともあり、日本で多数制作発表しており、知人も多くゆかりが深かった。



