
米田知子の作品は「記憶」と「時間」をテーマに、入念なリサーチのもとで制作される。この“見えるものと見えないもののあいだ”は、歴史上の人物が実際に使っていた眼鏡のレンズを通して、彼らに関係のあるテキストまたは写真などを見るという、非常にユニークな手法で撮られたモノクロ写真である。歴史やドキュメンタリーが好きで、かつてはジャーナリストを目指したこともあった米田ならではの作品といえるだろう。2003年に資生堂ギャラリー「記憶と不確実さの彼方」展においても話題を呼び、今なお新作を期待される人気を誇る、代表的シリーズのひとつである。この作品では、ドイツの文豪ヘルマン・ヘッセの眼鏡を通して第一次大戦中の整列した出陣前の兵士達の写真を見ている。一見、ピンボケで建物しか見えないが、実は兵士達が写っているのだ。大戦中ヘッセは平和主義を訴えドイツ批判をするが、終戦後そのことが原因で 作家活動も脅かされてしまう。しかし作家生命と引き換えにしてでもヘッセは強く平和を訴えたかったのである。ヘッセの真摯な気持ちが伝わってくるような作品である。シリーズ中の人気も高く、残部が少なくなっているのでお見逃しのないように。
1965年、兵庫県明石市生まれ。
1989年にイリノイ大学シカゴ校芸術学部写真学科を卒業、1991年にロイヤル・カレッジ・オブ・アートを修了する。現在はロンドンに在住し、ヨーロッパを中心に活動。『記憶』と『時間』をテーマに制作を続け、1996年から発表している《トポグラフィカル・アナロジー》シリーズでは、解体されてゆく住居の壁を撮影。はがれかけた壁紙や壁に残るヒーターの煤の跡、画鋲の跡などからかつて人が住んでいた様子を見出そうと試みる。続く《見えるものと見えないものの間》シリーズでは19世紀から20世紀の歴史上の人物の眼鏡を通して、その人に関連する書物等を撮影。近年の《Scene》シリーズでは、一見何気ない風景だが、実は歴史上重要な出来事が起きた場所を撮影、という作風が高い評価を得ている。主な展覧会として、1999年のVOCA展(上野の森美術館)をはじめ、 2003年の個展「記憶と不確実さの彼方」展(資生堂ギャラリー)、2004年の「ノンセクト・ラディカル」展(横浜美術館)などが挙げられる。2005 年2月には、故郷を襲った阪神大震災の直後と10年後の風景を撮影した個展「震災から10年」展を発表(芦屋市立美術博物館)。現在横浜トリエンナーレ 2005に巡回中。2005年秋に東京・シュウゴアーツで開かれた個展「雪解けのあとに」では、ハンガリーでは水、エストニアでは森をライトモチーフに『歴史』と『記憶』の変容をテーマにした作品を発表した。同シリーズはEUジャパンフェスト日本委員会主催の「Europe Today」プロジェクトの一環として、写真集『In-between』の一冊としても発売、好評を博している。
| 制作年 | 1998年 |
|---|---|
| エディション | ED --/8 |
| サイン | あり |
| 技法 | ゼラチンシルバープリント |
| シートサイズ (縦×横) |
38x38cm |
| 作品の状態 | 良好 |
| 額仕様 | 黒/マット |
| 額寸 (縦×横×奥) |
61x50.8x3cm |
| お届け期間 | 約4週間 |
| 特記事項 | |
| 海外店頭価格 | no data (2006/05/08 更新) |
| A000-00934 |